起業 Day1 — SE 業務を続けながら AI 事業を始めた理由
「会社を辞めずに、もう 1 個事業を始めた」と人に話すと、8 割の人がまず「えっ大丈夫?」という顔をします。残り 2 割は「なるほどね、やってみたいんだよね」という反応。今日はその 2 割の方に向けて書きます。
私は普段、Databricks / Python / Azure を使うデータ系の SE 業務を本業にしています。その上で、2026 年 4 月から「PlayWorker(プレイワーカー)」という屋号で、中小企業向けに AI 受付システムの導入を支援する事業を立ち上げました。本業を続けたまま、二足のわらじで動かす道を選んでいます。辞めずに始めた、その日の温度感を残しておくのがこの記事の役割です。
なぜ今、AI 事業を始めようと思ったか
きっかけは 3 つが重なりました。
- 生成 AI の音声品質が、2024〜2025 年で「お客様に出せる」レベルまで来た
- 患者として通っていた整体院に、AI で解ける構造課題が転がっていた
- SE 業務で培った「業務フローにシステムを当てる」感覚が、AI 受付の設計と地続きだった
特に大きかったのは、ある日気づいたこの一文です。
「整体院の予約ページに、電話取りこぼしの自白文が普通に書かれている」。
「施術中はお電話に出られないことがあります。折り返しご連絡いたしますので、メッセージをお残しください」。これは経営課題が言語化されているということで、提案の入り口がもう開いている状態でした。
「困っている人がいる × 解ける技術がある × 自分の経験が地続き」の 3 点が揃った瞬間、動かさない理由がなくなった。これが正直な動機です。
なぜ SE 業務を辞めずに始めたか
「会社を辞めて全力で AI 事業に振り切る」選択肢は、初期にもちろん検討しました。最終的に二足のわらじを選んだ理由は 3 つです。
1. キャッシュフローのリスクヘッジ
AI 事業の初契約までには時間がかかります。実績ゼロから立ち上げる以上、初月から月 10 万・20 万を取れる前提は危険です。SE 業務の収入を残しておけば、「契約が取れない月が続いても、精神的に追い詰められない」状態を維持できる。
精神的な余裕は、商談トーンに直接出ます。追い詰められた営業ほど、相手に押し売り感が伝わってしまう。これは商品の質ではなく、こちらの状態の問題です。
2. SE 業務そのものが「学びの最前線」
Databricks や Azure の現場で日々触れている技術は、AI 事業の設計にそのまま転用できます。クラウド構成・認証設計・データの流し方。辞めて切り離すには、もったいなさすぎる学び場でした。
3. 「辞めなくても回る」を証明したい
屋号「PlayWorker=遊ぶように働く」を名乗っている以上、二足のわらじを破綻させずに回すこと自体が、屋号の証明になります。最初から「片方を捨てる」前提だと、屋号が嘘になる。
二足のわらじの設計ルール
副業起業や SE 副業を考えている方の参考になればと思うので、私が自分に課しているルールを表で出します。
| ルール | 内容 |
|---|---|
| 時間配分 | 午前は AI 事業(投資系タスク)/午後は SE 業務 |
| 重要会議 | SE 業務の朝会・MTG は午前枠を侵食しない範囲で受ける |
| 緊急対応 | SE 業務側のクリティカルは即対応/AI 事業側は基本 24h 以内で十分 |
| 週末 | AI 事業 or 休息に全振り(SE 業務は持ち込まない) |
| 体調管理 | 睡眠 7h 死守・疲労蓄積で両方の品質が落ちる前提 |
| 商談準備 | AI 事業の商談は「午前枠の最初」に固定(疲れる前に終わらせる) |
肝は 時間配分 の 1 行です。午前は投資系タスク、午後は SE 業務を置いた瞬間に、二足のわらじが回り始めました。
理由は単純で、午後に AI 事業のような「ゼロから作る作業」を置くと、SE 業務の疲労が乗ったまま判断することになり、提案の質が落ちるからです。重要なのは「両方やる」ではなく、「重い思考をどちらに割り当てるか」でした。
これは、左右の足に違う種類の靴を履いて走る感覚に近い。靴の選び方が間違っていなければ、両方の足が機能する。間違えると、どちらの足も痛める。
判断負荷を下げる仕組みごと作る
このルールを毎朝自分で考えて運用するのは、地味に脳を消耗します。なので、ルールを実装する側を AI に寄せました。
私は Claude Code(コマンドライン版 AI アシスタント)と、その上で動かしているローカルのタスクメモ(自分のタスクを 1 枚の JSON で持つ簡素な仕組み)で、二足のわらじを運用しています。朝「おはよう」と打つと、AI が「午前枠=AI 事業の◯◯」「午後枠=SE 業務の◯◯」を自動で並べてくれる。判断する作業だけ残して、考える作業は AI に降ろす。これが二足のわらじを破綻させない、いちばんの仕掛けでした。
「両方継続して薄く回す」方が、難しい
このルールは、始めて 1 ヶ月で何度か破綻しかけました。SE 業務の繁忙期に AI 事業の商談準備が重なると、両方が薄まる。
「片方を捨てて全力」より、「両方を継続して薄く回す」方が、設計として圧倒的に難易度が高いと理解しました。
それでもこの形を続けるのは、屋号が示す通り「遊ぶように働く」を生き方として実装するためです。1 つの仕事に全人生を投じる働き方は、私の中ではまだ Play になっていない。複数の活動が同時に動いている状態の方が、私にとっては自然です。
Day1 はまだスタート地点。商談・契約・ケーススタディ蓄積の長い道のりがあります。記録は続けます。
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それでは、また。
荒居 憧哉(PlayWorker 代表)