名刺を 3 回作り直した話 — 100 枚刷ったその日に「何屋さんか分からない」と言われた
前回、SWELL と Claude Design で AI 事業サイトを 2 日で立てた話を書きました。
SWELL と Claude Design で AI 事業サイトを 2 日で立てた話
今日はもう 1 つの「起業 Day1 アイテム」、名刺の話です。
結論から書きます。名刺は 3 回作り直す前提で動いた方が早い。私は v1 で 100 枚刷ってから「何屋さんか分からない」と言われ、v2 で逆方向に振りすぎ、v3 でやっと機能する 1 枚にたどり着きました。3 回ぶんの印刷代が、いちばん安い授業料だったと今は思っています。
v1:Claude Design で 30 分・ラクスルで 100 枚
起業を決めたその週に、名刺を発注しました。屋号「PlayWorker」、サービス概要「AI 受付システム導入支援」、自分の名前、メール、サイト URL。この 5 つがあれば商談で困らないだろうと本気で思っていました。
デザインは Claude Design(Anthropic の Claude がデザイン要素を書き出してくれるツール)に「中小企業の経営者向け、知的トーン、シンプル」と投げて 30 分で出力。ラクスルで 100 枚 1,500 円ちょい。金曜の夜に注文して、月曜の朝には届いていたスピード感が、当時の自分には誇らしかった。

これが v1 の表面です。
100 枚刷ったその週に飛んできた致命的な指摘
刷り上がった v1 を、信頼している知人に渡しました。30 秒見て、開口一番こう言われます。
> 「これ、もらった人、何の人か分からないと思う」
頭が一瞬白くなりました。「AI 受付」って大きく書いてあるのに、何の人か分からない?
その後 30 分かけて、3 つの致命的欠陥を指摘されました。
1. 「AI 受付」は商品名でしかない
それが何をするサービスか、どんな問題を解決するかが書かれていない。商品名だけ書かれた名刺は、相手の頭に何も引っかからない。
2. 誰のための名刺か明示されていない
中小企業の経営者を相手にするのに、「中小企業向け」の一言がない。ターゲットが書かれていない名刺は、誰にとっても自分事にならない。
3. 連絡してもらう動機が一切ない
メールアドレスとサイト URL は載っているが、「なぜ連絡するか」の動機がゼロ。情報が並んでいるだけの名刺は、机の引き出しに入って終わる。
3 つとも、言われてみれば「確かに」しかない。それを 100 枚刷り終わった後で気づいたのが私の罪でした。
商工会議所でも同じことを言われた
「知人が辛口だっただけかもしれない」と思いたかった私に、止めを刺してきたのが、その翌週に行った地元の商工会議所での面談です。
担当の方が、私が机に出した名刺をしばらくじっと見て、こう言ってきます。
> 「文字、ちっちゃくない?」
> 「住所、書いてないんだ」
> 「何屋さんなんですか?これ」
3 連発でした。録音は許可が下りなかったのでセリフは記憶ベースですが、3 つともナイフみたいに当たっていたことだけ覚えています。「デザインに振りすぎ」という私の自覚が、外部の人の目で確定診断された瞬間でした。
知人と公的機関の人、それぞれ別の角度から、まったく同じことを 1 週間以内に 2 回言われる。これでようやく腹を括りました。「あ、これ作り直すしかない」。100 枚は、もったいないけど引き出しの肥やしです。
v2:指摘を反映したつもりが、今度は情報過多
3 日かけて v2 を組み直しました。書き換えたのはこの 3 点。
- 「AI 受付」 → 「電話の取りこぼしを、AI が受け止めます」(機能を一行で)
- ターゲット明示 → 「中小企業・整体院・接骨院・サロン向け」
- 連絡動機 → 「無料相談 30 分・初期費用ゼロのパイロットあり」
完成と思って別の人に見せたところ、今度は逆の指摘が飛んできました。
> 「情報量が多すぎて、何がメインか分からない」

v2 は、v1 の反省を全部詰め込みすぎた結果、全部のメッセージが等価になって、結局どれも刺さらない名刺になっていた。
名刺は 10 秒で渡されて 10 秒で読まれます。書ける情報量には物理的な上限がある。「載せたい情報」と「載せるべき情報」は別物だと、ここで初めて理解しました。
v3:Claude Design で「相手目線」から組み直す
v3 では、Claude Design に投げる指示を全面的に変えました。
- 渡された相手の頭に「1 つだけ問い」を残す名刺
- 商品名・ターゲット・機能の説明はサイズを思い切り落とす
- 渡した瞬間に「あ、これ気になる」と相手が言う構成
5 分で出てきた構成は、私が考えていた v2 とは情報の優先度が全く違いました。
| 大きさ | 載せた情報 |
|---|---|
| いちばん大きく | 「電話の取りこぼし、AI に任せませんか」(問いかけの一文) |
| 次に | 屋号 PlayWorker と私の名前 |
| 次に | 「3 ヶ月パイロット・全額返金保証」 |
| いちばん小さく | 連絡先と URL |
「商品名」「ターゲット」「機能説明」のような自分目線の情報を全部小さくして、相手が 30 秒考えるための問いかけを一番大きく置く。

これが v3 です。実際に商談で配ってみると、相手の反応が v1 とは別物でした。「あ、これ気になってたんだよね」と、相手の方から会話が始まる回数が明らかに増えた。
裏面はオマケです。屋号「PlayWorker」を「Play × Work」と分解して、シルエットだけのキリン(首が長くて、上から見渡せる動物の象徴)と一緒に置きました。

これは商談の本筋には何の役にも立たないんですが、渡された相手が「あ、なんかこれ、ちゃんと考えて作ってる人なんだな」と感じる装置としては機能しています。実用 9 割、遊び 1 割。事業の名刺なんだから、これくらいの比率がちょうどいい。
名刺作りで学んだ 3 つの原則
3 回作り直してわかったのは、この 3 つです。
1. 名刺は商品カタログではない、問いかけのきっかけ
情報を並べるのではなく、相手の頭に 1 つ問いを残す。それが名刺の仕事だと、ようやく分かりました。
2. 自分の言葉で書くと、自分にしか刺さらない
自分が大事だと思っている言葉と、相手が反応する言葉は別物です。サービスの中身に近い人ほど、自分目線の言葉になりがち。だから第三者の目を通すまで「未完成」と思っておくのが正解。
3. v1 は「捨てる前提」で雑に作る
v1 を完璧にしようとして 1 週間使うのが、いちばん時間の無駄です。30 分で出して、配って、指摘をもらって、3 回目で機能する 1 枚にする。最短ルートで見て 1〜2 週間で着地します。
100 枚は授業料、と思える日が来る
v1 の 100 枚は、今も引き出しの奥にあります。捨ててはいません。「同じ間違いを繰り返さないための実物標本」として置いておくつもりです。
これから名刺を作る人に伝えたいのは、たった 1 つだけ。最初の 1 枚で完璧を目指さない。目指すと、必ず悲しい引き出しを 1 つ作ることになります。
事業の入口は名刺です。入口の設計を雑にすると、その後の商談全部が薄まる。逆に、入口で 30 秒考えてもらえる名刺があると、商談の温度感がまるで違う。100 枚は、その差を体で覚えるために必要だった授業料だったと思っています。
商品が必要な方には、いつでも商品ページから相談に来てもらえれば。
サービスを見る
それでは、また。
荒居 憧哉(PlayWorker 代表)