商工会議所にセミナー登壇を打診したら、サクッと断られた話
事業を始めて 1 ヶ月くらいで、地元の商工会議所のセミナー枠に登壇できないかを打診しに行きました。
結論を先に書きます。サクッと断られました。
ただ、断られ方が想像以上に学びの塊で、「公的機関のセミナー登壇って、こういう構造なんだ」を体で理解できた 90 分でした。今日はその 90 分を、できる範囲で残しておきます。「実績ゼロから商工会議所に売り込んだら、何を言われるか」の参考として読んでもらえれば。
なぜ商工会議所だったか
商工会議所は、地域の中小企業が会員登録している公的団体です。経営相談・補助金窓口・セミナー主催などをやっています。AI 受付システムの導入支援を仕事にしている私にとって、会員企業向けセミナーで話す機会が取れれば、リーチできる経営者の人数が一桁変わる。だから早い段階で打診したかった。
理由は 3 つでした。
- 参加者が、稟議を通せる経営者本人
- 「公的機関主催」のラベルがつくと、私個人より高い信頼の土台から話せる
- AI に関心はあるが何から始めていいかわからない経営者層に、SNS や Web 広告では届きにくい
特に 3 つめが大きい。SNS で届くのは、すでに AI を触っている層だけです。まだ触っていない層に届く経路は、リアルの集客装置を持っている公的機関が一番強い。
連絡経路は「問い合わせフォーム」1 本
商工会議所の公式サイトの問い合わせフォームに、屋号・短い自己紹介・提供できるテーマ案・想定参加者数と時間・過去の登壇実績を書いて送信。実績欄に書けたのは、地元の AI 勉強会コミュニティで 1 回ライトニングトーク(5 分尺)に登壇した経験のみ。実績としては最小単位でした。
返信は 3 営業日後。「一度、面談しましょう」と返ってきて、応接室での 90 分の面談が組まれました。フォーム送信から面談まで 1 週間以内。想像より早かった、というのが正直な感想です。
応接室で言われた、5 つのこと
担当の方が話してくれたのは、大きく 5 つのトピックに分かれていました。
1. 講師選定は、資格・実績ベースの世界
「うちのセミナー枠、講師は基本的に中小企業診断士・社労士・弁護士みたいな資格保有者か、他の商工会議所での登壇実績がある人を中心に選んでます」。
実績ゼロからの新規参入は、構造的に難しいということです。会員講師から売り込みが既にたくさん来ているので、その中から各回 1 人を選ぶ運用。ライトニングトーク 1 回の実績では、土俵に立てない。これが冒頭でわかった瞬間、私の打診の勝ち筋は、初手で半分消えました。
2. セミナー規模・形式が想像より大きい
「うちの一般的なセミナーは、30 人規模 / 2 時間 / 資料 20〜60 ページが標準です」。
私が想定していたのは、コンパクトな 60〜90 分尺・資料 7〜10 枚の構成。完全に小さく見積もりすぎていた。「資料を持ち帰って後で見返したときに、何を学んだか分かるボリューム」が期待されている、と知って、提案サイズの感覚が一気にスケール調整されました。
3. PR・営業活動は禁止
「公的機関セミナーでは、講師・講師企業の PR や営業活動は基本的に禁止です」。
「名刺交換も、原則できないと思ってください」。
ここで一発で理解しました。私が想定していた「セミナーをきっかけに見込み客と接触する」設計は、商工会議所スキームでは成立しない。セミナーは「学習の場」であって、「営業の場」ではない。これは商工会議所側の運営原則として、揺るがない部分です。
4. 代替提案がきちんとある
ここからが面白かったところです。担当の方は「無理です、で終わり」ではなく、実現可能な代替経路をいくつか教えてくれました。
| 経路 | 内容 |
|---|---|
| 民間セミナー | 営業色が許される民間ルートを使う |
| 大規模商工会議所の事例研究 | 東京本部や大阪などの登壇事例を研究材料にする |
| 入会してノウハウ蓄積 | 会員になると内部の勉強会で話す機会が出る |
| 会報誌掲載 | 会員事業者は新サービスを無料掲載できる |
| 経営者紹介ページ | 顔写真・経営ビジョン付きで個人事業主を紹介する公的ページ。検索時に自社サイトと並んで表示され信用補強になる |
| 異業種・新入会員交流会 | 起業初期の事業者同士で情報交換できる場 |
「断る代わりに、別の入口を 6 つ提示する」。これ、純粋に営業対応として勉強になる動きでした。私が断る側に回った時、これくらい代替経路を出せるかと言われると、たぶん出せない。
5. 個人への質問
最後に、私個人への雑談的な質問もありました。「年商どのくらいなの」「個人でやってるなら十分生活できるよね」「システム開発も受注してるって書いてあるね、そっちで食っていけるよね」。
これは「ビジネス成立に対する不安要素は感じていない」という、暗黙のフィードバックでした。事業の不安よりも、AI 事業単独での実績作りが論点だ、という構図がここで明確になった。
学んだ 3 つのこと
90 分の面談を通して、商工会議所のセミナー登壇に関して、3 つのことが体に入りました。
1. 実績ゼロから入るには、最低でも「中規模商工会議所での 1 回」が要る
ライトニングトーク 1 回では、信頼の土台として弱すぎる。まず民間セミナーで実績を作って、それを持って商工会議所に再打診する順番が現実的。
2. 公的機関セミナーは「営業の場」ではなく「学習の場」
ここを勘違いしていると、登壇できても次に繋がらない。そもそも私が当初イメージしていた「商工会議所セミナー = 見込み客との接点創出」は、構造的に成立しない。
3. 断られる側の体験そのものが、営業のヒント
今日いちばん大きい収穫はここでした。断り方がうまい人は、断りながら 6 つの代替経路を出してくる。これは、自分が断る側に回ったときの、商品設計と営業トーンの教科書になる。
「セミナーは難しい」、で終わらせない
セミナー登壇という入り口は、いったん閉じました。でも、面談で出てきた会報誌掲載・経営者紹介ページ・異業種交流会は、別の入口として残っている。
入会の検討も、面談前は「敷居が高い」と勝手に思っていたのが、面談後は「会員になるメリットが具体的に見えた」状態に変わった。商工会議所のセミナー登壇というゴール 1 つを、別の経路 6 つに分散させる。1 個の「ダメ」が、6 個の「使えるかも」に分裂する90 分でした。
実績ゼロからの公的機関アプローチを考えている方には、「断られる前提で、まず話を聞きにいく」ことを強く推します。サクッと断られた帰り道に、次の打ち手が 6 つ手元にある状態で出てこれたのは、話を聞きに行ったからでしかない。
商品が必要な方には、いつでも商品ページから相談に来てもらえれば。
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それでは、また。
荒居 憧哉(PlayWorker 代表)